2019.11.13 | Topics
徳洲会心臓血管外科(心外)部会は10月31日、第72回日本胸部外科学会定期学術集会の日程に合わせ京都府内で第5回集会を開催した。同学会では、名古屋徳洲会総合病院の大橋壯樹総長がビデオシンポジウムで演題発表したほか、徳洲会グループ病院から多数発表。そのうちから同部会で5演題の発表があり、約30人の参加者が研鑽した。
徳洲会心外部会の冒頭、部会長の大橋総長、岸和田徳洲会病院(大阪府)の東上震一総長(医療法人徳洲会副理事長)が挨拶。続いて、同日開催の胸部外科学会で発表した演題のうちから5演題を発表し、参加者が知識を共有した。
千葉西総合病院の西嶋修平・心臓血管外科医師は「大腿動脈送血を使用するMICSにおける疾患別の無症候性脳梗塞(SCI)の検討」と題し発表。MICS(低侵襲心臓手術)術後にMRI(磁気共鳴画像診断装置)を撮影し、疾患ごとにSCI発生率の検討を行った。
結果、大動脈弁狭窄症が最も多く、動脈硬化性疾患であることや弁切除時の微小デブリ(創面切除)の脱落の影響が考えられると考察。また、すべての疾患において右内頚動脈領域でのSCIが多く、「体位の影響と、腕頭動脈が心臓から最も近位かつ大腿動脈から最も遠位である大動脈第一分枝であることが理由と考えられます」と解説した。
大隅鹿屋病院(鹿児島県)の内野宗徳・心臓血管外科医師(現・佐賀大学医学部心臓血管外科助教)は「ガイドライン(GL)を逸脱したスタンフォードA型急性大動脈解離の保存的治療」をテーマに発表。急性A型解離治療の第一選択は緊急手術であるが、GLでは保存的加療が可能な条件も示されている。しかし、高齢者や多岐にわたる既往症を有する患者さんなどには手術が厳しく、GLから逸脱しても保存的加療を選択するケースがあり、同院の症例で検討した。結果、GLから逸脱していても、保存的加療により急性期死亡を免れる症例もあり、「全身状態や社会的要因など総合的に判断し、治療方針を決定する必要が考えられます」と結論付けた。
岸和田徳洲会病院(大阪府)の畔栁智司・心臓血管外科主任部長は「SIMPLE STRATEGYで行う僧帽弁形成術の長期予後」と題し発表した。同院での僧帽弁形成術は、後尖逸脱ならresection(切除術)、前尖逸脱なら人工腱索を用いた手術を実施。比較的小さいリングによる弁輪形成術を基本とした、シンプルな戦略における僧帽弁逸脱の長期成績を検討した。エンドポイントとして心臓死亡、再手術など設定し、症例全体と後尖resection症例を比較すると、後尖resectionがより良好な成績を示した。また、「Respect Rather Than Resect(弁尖を切らずに残す)の論文報告と比べ、死亡率や再手術率は遜色ない成績となりました」と強調した。
福岡徳洲会病院の陣内宏紀・心臓血管外科医長は「5m歩行速度を用いた高齢者開心術におけるFrailty評価と周術期合併症予測」をテーマに発表。同院で実施している5m歩行速度が、75歳以上の開心術に対する術後合併症発生の予測因子になり得るか検討した。結果、高齢者の開心術において、Japan ScoreやEuro Scoreでは有意差が見られなくても、歩行速度が遅い群のほうが改善は遅い傾向にあったと報告。「患者さんの活動度を反映し得る5m歩行速度は、高齢者に対する開心術におけるFrailty(虚弱)評価と周術期合併症予測因子として、簡便で有用なテストになり得ると考えます」とまとめた。
大垣徳洲会病院(岐阜県)の大城規和・心臓血管外科部長は「急性心筋梗塞(AMI)に続発した心室中隔穿孔(VSP)に対してImpella補助が有効であった3例」と題し発表。VSPではIABP(大動脈内バルーンパンピング術)やPCPS(経皮的心肺補助法)で補助し、可能な限り手術を待つが、進行性の多臓器不全に対し緊急手術を余儀なくされる場合もある。発表ではVSPショックに対し、Impella(カテーテル型左心補助装置)で補助後に手術した3症例を報告した。3症例ともにImpellaにより心負荷軽減と心筋循環改善をもたらし、AMI発症後2~3週間の手術待機を可能としたことを説明。「心筋瘢痕化が促進され、安定したVSP閉鎖術を施行できました」と胸を張った。
最後に徳洲会インフォメーションシステム(TIS)の尾﨑勝彦社長が「電子カルテでのNCDと連携したTIS手術症例データベース構築について」と題し報告。一般社団法人 National Clinical Database(NCD)への報告入力の簡略化、グループ統一の手術症例データベース構築に向け、新システムの調査内容を説明した。
その後近くの居酒屋で懇親会を行ない、親睦を深めました。