2014.01.09 | Topics
新年明けましておめでとうございます。
昨年は、当院のトピックスとして、植込み型補助人工心臓手術を行ったことです。日本では2年前から保険診療となり、200例近い手術を行っておりますが、東海地区では初となりました。患者さんは三重県在住の59歳男性で、重症心不全にて2013年2月7日 当院に転院となりました。強心剤投与にても血圧低下、呼吸困難、意識低下がありさらに悪化してきたため、2013年6月2日 に植え込み型補助人工心臓装着術を行いました。術後15日目に立つことができ、1か月目に歩行を開始しました。2か月目に集中治療室から一般病棟に移り、リハビリを続けていました。一時小さな脳梗塞で退院が長引きましたが12月29日に退院されました。手術前の呼吸困難、食欲不振、意識低下もなくなり、自宅で普通に生活をすることができるようになりました。今後当院に1か月に1回通院しながら、心臓移植を待つことになります。
従来の治療では回復せず心臓移植のみでしか助からない重症心不全の患者さんは、日本では心臓移植を3年間近くも待ち続けねばならず、その間に命を落としたり、病院で呼吸困難等で苦しみながら入院生活を送らなければならなかったのですが、今回の植え込み型補助人工心臓によって、呼吸困難等の心不全症状が改善し、多少の制約があるものの自宅でのほぼ通常の生活が可能となりました。今後更なる人工心臓の開発によりこのような患者さんへの適応がさらに広がると思われます。
また、低侵襲手術としてMICS手術(右肋間小開胸心臓手術)、MICSCABG(左肋間小開胸オフポンプ冠動脈バイパス手術)を標準術式として行うことができるようになりました。
また、冠動脈バイパス手術は年々増加し去年は120例(弁膜症等合併を含む)を行いました。1本のグラフトで2~3か所のバイパスを行うセクエンシャルバイパスを行うことで、グラフト採取、吻合数を減らし、手術時間、手術侵襲を軽減することができます。またグラフト斜切開平行四辺形吻合を開発し質の高い吻合を行うことができました。
ただ、重症症例、緊急症例、重症合併症症例も年々増加し、それに伴い手術後合併症で後遺症を残される方、死亡される患者様もおられます。患者様ご家族様はもちろんご紹介いただいた近隣の先生方にも、多大な心労とご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。日々反省の毎日ですが、苦い経験を糧として、今度手術をさせていただく患者さまを一人でも多く、お元気に退院できるように、片時も手を抜かずに頑張ってまいります。