2014.05.29 | Topics
2014年4月24-25日に、アメリカニューヨークで行われた学会『Aortic Symposium』で発表してきましたので報告します。
Aortic symposiumはわれわれ心臓血管外科医にとって世界最大の学会の一つ、アメリカ胸部外科学会(AATS)が二年に一度、ニューヨークで開催する大動脈疾患の国際学会で、2012年に続き、今回はニ演題を発表しました。AATS主催の学会で、教科書を見れば必ず載っているような有名な先生が世界中から集まる学会のため、発表すること自体が名誉な学会ですが、今回はニ演題共に優秀演題に選んでいただきました。私が発表したのは、『The SurgicalResult of Type A Acute Aortic Dissection in Consecutive 633 Patients in theSingle Center』と『The Surgical Result of Type A Acute Aortic Dissectionin Consecutive 117 Patients for Octogenarians and Nonagenarians』という、ニ題とも当院における急性大動脈解離の緊急手術の結果をまとめたものです。
急性大動脈解離は、心臓から続く体の幹のような太い血管、大動脈に突然発症する病気で、動脈の壁が脆弱になり破裂や臓器虚血を引き起こす突然死の危険性がきわめて高い疾患です。人口10万人のうち年間で3人程度の発症と言われ、非常にめずらしく、しかも緊急性、危険性が高いきわめて重篤な疾患です。当院では愛知県だけでなく、岐阜県や三重県からもこの疾患が集まり、症例を積み重ねて来ました。その結果、国内では有数の症例数の経験があります。
日本の急性大動脈解離は、世界的に見ても非常に成績が良く、また、海外では手術をあきらめるような高齢者であっても、安全に手術が行われています。今回私が発表したのは、多くの急性大動脈の手術症例をまとめただけでなく、日本特有とも言える80歳を超える超高齢者に対する手術成績です。この高齢者に対する手術のインパクトは世界的にも強いと思われます。今回は、優秀演題に選ばれたため、本会場の急性大動脈解離のセッションにて、Steven. L. Lansman先生とD. Craig miller先生にて、私の発表内容が紹介されました。千人規模の学会会場で、私の作成したスライドを用いて、日本の手術成績という形で紹介していただき、また非常に高齢の患者に対してもいい成績を出していると評価していただきました。われわれの施設が一度も緊急手術を断ることなく積み重ねてきた手術症例を、世界的な舞台で評価していただいたことは、非常に光栄な瞬間でした。学会中には日本有数の心臓外科の他施設の先生とも話をする機会に恵まれ、そこでも当院の症例数や発表を誉めていただく機会がありました。
二度目のニューヨークの学会発表は非常に有意義であり、毎日の診療を、今後もこつこつと積み重ねて行く大事さをあらためて感じることが出来ました。この先も、診療技術を磨き、世界に誇れる医療を地域の皆様に提供していきたいと思います。