心臓病を理解しよう

感染性心内膜炎

感染性心内膜炎とは

 

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心臓の中にある細菌の塊(疣贅ゆうぜい)

 

 

心臓の中にある弁、腱索、心臓の壁に細菌(いわゆるばい菌)がくっつき感染をおこすことです。まれな病気ですが、細菌のくっついた場所が心臓の中ということでなんらかの治療をしなければ助からない恐ろしい病気のひとつです。1年間に10万人に2から6人の発症と言われています。心臓弁膜症、先天性心疾患の患者さんにかかりやすく、また歯科衛生状態のよくない場合、長年の透析患者、注射歴のある患者さんにもかかる機会があると言われています。HIV感染者、糖尿病患者など免疫状態の悪い場合にもかかりやすいと言われています。人工弁の入っている患者さんも感染の危険性もあります。感染性心内膜炎の7~25%は人工弁置換術の患者さんで、1年間で10万人の人工弁患者さんの1人が感染性心内膜炎にかかるといわれています。

 

 

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僧帽弁の上にある細菌の塊(疣贅ゆうぜい)

 

 

どんな細菌(ばい菌)

ストレプトコッカス(連鎖球菌)がもっとも多い原因菌ですが、最近はスタフィロコッカスアウレウス(黄色ブドウ球菌)が最も多くなってきたと言われています。他にエンテロコッカス(腸球菌)、真菌などさまざまな菌が検出されております。細菌の種類によってはゆっくり進行するものから、急激に進行するものまであります。

 

 

症状は

細菌による感染、塞栓の症状と、心臓の弁が破壊されることにより心不全の症状が主になります。
高熱がでる。しかもなかなか下がらない。
また息切れ、呼吸困難、冷や汗が出現することがあります。また、食欲不振、体重減少、体がだるいなどの症状の場合もあります。
また手足に黒い斑点ができることもあります。
細菌が心臓から全身に飛んでいく塞栓、感染も約半数にあると言われています。頭に飛んだ場合、脳梗塞、感染性脳動脈瘤を合併し重篤になることもあります。脾臓、腎臓、腸管にとぶこともあり臓器の障害、感染を引き起こすこともあります。
いつまでたっても熱が下がらない、脳梗塞になり実は数日間熱がでている、腎臓が悪くなり実は微熱がでている、皮膚、爪に斑点ができて実は熱もある、という方がよく調べると感染性心内膜炎であったこともあります。

 

 

診察で

心雑音が聞こえます。また感染による体の消耗もあり栄養状態も不良な場合があります。

 

 

心電図で何がわかる?

弁膜症を合併しているので、心筋肥大の所見や、心房細動などが見られますが、特異的ではありません。

 

 

胸部レントゲン検査

心拡大あるいは肺うっ血の所見があります。

 

 

心臓超音波検査で何がわかる

心臓の弁、心臓の中に疣贅(ゆうぜい)と呼ばれる細菌の塊が見えます。これが見えればまず診断が可能となります。また弁の狭窄や逆流を認めます。

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超音波検査で心臓の中に巨大な細菌の塊(疣贅ゆうぜい)を認める

 

 

血液検査で何がわかる?

白血球の上昇、CRPの上昇が見られます。血液培養で細菌の検出も可能です。

 

 

最終診断は

発熱、血液培養で細菌の検出、感染の所見と心臓超音波検査で弁に細菌の塊が見られた場合に感染性心内膜炎と診断します。

 

 

治療は

細菌そのものに対する治療と、細菌で傷ついた心臓の治療を行います。
原則は抗生物質で細菌を死滅させます。
細菌の塊が心臓に住み着き弁を傷つけたり、もともと異常のある弁あるいは心臓の異常がさらに悪化した場合、心不全となり呼吸循環動態に変調をきたします。そのために心不全治療を行います。酸素投与、利尿剤、強心剤等で心臓の負担を減らします。
このように、まずは薬で内科的な治療を行い、感染を止め、心臓の調子をよくすることが原則です。
しかし、内科的治療で効果が無い場合、つまり熱が下がらない、心不全がよくならない場合は手術が必要です。また症状は安定している者の心臓の中の細菌の塊が大きくて全身に飛びさらに全身状態が悪化する危険性がある場合も緊急手術が必要です。

手術適応は

1、抗生物質で効果がない場合(熱が下がらない、心臓の弁がますます細菌に潰される)

2、心臓の状態が悪化し心不全が進行する場合

3、大きな疣贅がある場合(1cm以上)

です。

 

 

どのような手術

心臓の中の細菌の塊を除去して、洗い流し、細菌によって傷ついた心臓の弁を修復するか人工弁に取り替える手術となります。細菌が心臓の壁や筋肉、大動脈のさらに奥まで侵入している場合はパッチで修復する場合もあります。術後は抗生剤を約6週間投与して再発防止に努めます。

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僧帽弁にくっついた細菌の塊、大動脈弁にくっついた細菌の塊

 

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感染治療後の僧帽弁穿孔、閉鎖不全に対するダヴィンチロボット手術

 
術後の治療

 術後は約6週間の抗生物質での治療を行います。細菌の再発を防ぎます。細菌の種類、患者さんの状態によってはなかなか細菌が死滅しない場合があります。熱が下がり血液検査での感染状態が正常化するまで抗生物質治療が必要となります。