脳梗塞
脳梗塞は超緊急の病気
当院の脳神経外科では、脳卒中患者さんを数多く見ています。脳卒中とは脳の血管障害による突然発症する病気のことで、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などがあります。その中でも、最も治療の緊急性が高いのは、脳梗塞です。
脳梗塞とは、脳を栄養する血管がつまったり狭くなったりすることで、脳細胞が壊れてしまう病気です。脳細胞が一度壊れてしまうと治すことは不可能であり、重い後遺症を残して寝たきりになってしまうことも多く、脳梗塞はとても恐ろしい病気です。
しかし、現代では医学の進歩により、急につまってしまった血管を再開通させて、数時間以内の脳梗塞なら治すことができるようになりました。血管がつまってから30分、1時間、2時間と時間が経つほど、脳細胞は壊れていくので、脳梗塞を疑う症状が現れた場合、少しでも早く治療を開始する必要があります。逆に、脳梗塞になってから6時間、8時間と長時間経過してしまった場合は、治すことができなくなり、再発・悪化を防ぐ治療のみとなってしまいます。
脳梗塞の種類と退院時の予後
◎ ラクナ梗塞
いわゆる小さな脳梗塞の事で、脳の深部にある細い血管の閉塞により生じる脳梗塞です。血管の閉塞により、脳の組織の一部が死んで脱落し空洞(ラクナ)を残すことからこの名で呼ばれます。現在、日本で最も多いタイプの脳梗塞です。
◎ アテローム血栓性脳梗塞
脳の太い動脈に、おかゆのようなドロドロとした固まり(アテローム)がたまって動脈硬化が起こり発症する脳梗塞です。高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病により発症、進行します。
◎ 心原性脳梗塞
心臓の中で出来た血栓が頸動脈を通って脳の太い動脈に詰まってしまうことで起こる脳梗塞です。心原性脳梗塞の原因となる心臓病でいちばん多いのが心房細動(不整脈の一種)で、血液が心臓の中でよどみ、血液を一気に送り出せなくなって血流が悪くなり、血液が固まって血栓ができやすくなります。心原性脳梗塞の症状は、ほとんどの場合、突然、手足の麻痺、感覚障害、意識障害などが一気に起こります。また、半身麻痺、失語、対象を認知出来なくなったり、視野の半分しか見えない状態に陥ります。
退院時機能予後
超急性期脳梗塞における最新治療
◎ 血栓溶解療法
rt-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)という薬物を静脈注射して血栓を溶解する治療法です。発症4時間30分以内の脳梗塞にこの治療が行えます
◎ 血栓回収デバイスを用いた血栓回収療法
rt-PA静注療法を行っても血栓に対して効果が表れにくい場合、血管が狭窄していて再開しにくいことが原因と考えられます。そこで次の手段として行われるのがカテーテルで血栓を溶解したり、機械的に血栓を回収する血管内手術です。血栓をポンプで吸い取って取り除くペナンブラ(図1)や、ステントの網で血栓をからめながら取り除くソリテア(図2)等が現在、国内外で行なわれている最新治療です。rt-PAが無効であった症例に用いることになっています。
すでに発表された臨床試験のデータおよび現在進行中の臨床試験では、血栓溶解療法後にも再開通を果たせなかった主幹動脈閉塞に対して、血栓回収デバイスを用いた血管内治療が優位であり、今後の超急性期脳梗塞治療としては、4時間30分以内の血栓溶解療法、再開通しない場合の血栓回収療法がスタンダードとなりつつあります。
脳梗塞を疑う症状:FAST
脳梗塞を疑う症状として『FAST』というチェック項目があります、以下のような症状が現れた場合は、超緊急の救急搬送が必要です。
当院での治療方法
当科では、救急隊から連絡を受けた時点で『発症から5時間以内のFAST』を疑えば、脳神経外科医へ即座に連絡が来るように体制を整えています。これにより病院へ脳梗塞患者さんが到着する前から、脳梗塞治療に必要な各種準備を始めることができます。搬入してから少しでも早く、tPA投与、血栓回収を行なえるように、各部署と連携して緊急対応を行なっています。
まとめ
脳神経外科では、脳卒中により重い後遺症を残してしまい、二度と喋ることができず、二度と歩くことができない患者さんを毎日のように診ています。一人でも多くの患者さんが、大切な人と会話ができて、自宅で元気に生活できるよう、これからも努力して参ります。