名古屋徳洲会総合病院
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名古屋徳洲会総合病院心臓血管外科

心臓血管病を理解しよう

不整脈

当院顧問藤田保健衛生大学名誉教授
日本心電図学会名誉顧問 渡部良夫 先生監修

 正常心電図

正常心電図

不整脈とは

心臓は筋肉の塊(かたまり)でできたポンプで、最適な速さで心房と心室が連携をとって規則正しく収縮と拡張を繰り返しています。この収縮と拡張の繰り返しをつかさどる電気回路を刺激伝導系といい、その働きの異常を不整脈といいます。不整脈といっても医学的には30位の種類に分けられ、いわばピンからキリまである訳です。ここでは、一般の方に分かりやすいように、説明させていただきます。

心臓の打ち方:電気回路のしくみ

心臓の或る場所(洞結節)から一定の速さで電気信号がでて、その信号が心房に伝わり心房が収縮します。次に心房から心室に伝わり心室が収縮すると、動脈に血液が流れ、手首などで脈が触れる訳です。この信号が1日に約10万回も繰り返され、それが伝わる道を刺激伝導系といいます。

心臓の中の電気信号の道筋 心室の収縮 : P波
心臓の中の電気信号の道筋 心室の収縮 : P波
心室の収縮 : QRS波 心臓の休止:ST-T波
心室の収縮 : QRS波 心臓の休止:ST-T波

不整脈の種類

一般の方に分かりやすく分類してみました。
 1、単発的にでる不整脈(期外収縮)
 2、脈が速くなる不整脈(頻脈性不整脈)
 3、脈が遅くなる不整脈(徐脈性不整脈)
 4、死に至る不整脈(心室細動、心室頻拍、心停止)
です。また、心電図で不整脈と診断された場合でも、何も治療しなくてもいいものから、治療が必要なもの、あるいは突然死を起こす恐ろしいものまであります。この点から説明いたします。

単発的に出る不整脈(期外収縮)

普段は規則正しい正常な脈の間に異常な電気信号が突然出現して、心臓が早く打ってしまうものを期外収縮といいます。これは、異常な電気信号が心臓のどこから出たかで心房性(上室性)と心室性に分類されます。どちらも若く健康な人にも出ることがありますが、心筋症とか狭心症・心筋梗塞などの心臓病のある人で出やすくなります。そうした心臓病があるかないか、どの程度出現するかによって、心配かどうかすなわち治療すべきかどうかが分かれます。
症状:どきんとする、一瞬胸の違和感が起こる。無症状のこともあります。

心房性不整脈(上室性期外収縮)
心房性不整脈(上室性期外収縮)
心室性期外収縮
心室性期外収縮

脈の速くなる不整脈(頻脈性不整脈)

1分間に100回以上心臓が打つ場合を頻脈といいますが、この頻脈の中にもいろいろな種類があります。以下に代表的な頻脈をお話します。

洞性頻脈:
電気信号の出る場所と回路は正常ですが脈が速い場合です。運動中に脈が速くなるのも、洞性頻脈であり、生理的なもので全く心配ありません。

心房細動:
心房が全体としてまとまって収縮せず、各部分が不規則でふにゃふにゃと動いていることをいいます。そのため、心室への信号の伝わり方も不規則になり、脈は速かったり遅かったりてんでばらばらです。

心房細動
心房細動
発作性上室性頻拍:
心房と心室の間で電気信号がぐるぐる回りを始めて、突然脈が速くなることを言います。幾つかの原因がありますが、そのなかで有名なものにWPW症候群があります。いつもは正常の速さですが、突然発作的に脈が速くなり、また突然発作が止まって正常に戻ることがあります。

心房粗動:
心房の収縮は規則正しいのですが1分間300回といったように非常に早く打つ状態です。普通には心房の信号が一つおきに心室に伝わり脈は1分間150回のように速くなります。

発生性上室性頻脈(PSVT)
発生性上室性頻脈(PSVT)

脈の遅い不整脈(徐脈性不整脈)

心臓の打ち方が1分間に50以下の時あるいは脈の間隔が時々2秒以上に延びるものをいいます。脈が遅い不整脈も場合により命取りになりますので、早めの診断と治療が必要です。

洞性徐脈:
信号の出る場所は正常ですが、脈が遅い場合をいいます。

洞不全症候群:
電気信号の正常の発信場所である洞結節からの発信が遅すぎたり心房に伝わらなかったりして脈が遅くなるのを洞不全症候群といいます。


洞不全症候群(シックサイナス)
洞不全症候群(シックサイナス)
房室ブロック:
洞結節から電気信号は出るのですが、心房から心室へ信号がうまく伝わらない場合を房室ブロックといいます。そのため心室の収縮が遅くなります。伝わらない程度によって、1度、2度、3度ブロックとか高度ブロックなどに分けられます。



第1度房室ブロック
第1度房室ブロック

第2度房室ブロック
第2度房室ブロック

モービッツI(ウェンケバッハ)型



第2度房室ブロック
モービッツT(ウェンケバッハ)型

モービッツU型



完全房室ブロック
モービッツU型

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死に至る不整脈(心室細動、心室頻拍、心停止)

命にかかわる不整脈で、突然死の主な原因です。
心室細動:心室全体がまとまって収縮せず、各部分がてんでばらばらにふにゃふにゃ動くだけで、全身に血液を送り出すことができません。

心室細動
心室細動
心室頻拍:
心室が早く脈を打ちすぎて血圧がほとんど出なくなる不整脈です。大部分は重症の心臓病のある方に出るのですが、一見健康な人に起こることもまれにあります。多少の血圧があるものの、ショック状態でそのままにしておくと呼吸困難、意識低下から死にいたる危険性のある不整脈です。

心室頻脈
心室頻脈
心停止:
心室がまったく収縮せず、静止した状態になってしまうことをいいます。

不整脈の原因は

  1. 刺激伝導系の異常:電気回路の働きの異常で、他に異常が無い場合です。
  2. ポンプとしての心臓の異常:生まれつきの心臓病、心臓弁膜症、心筋症
  3. 狭心症、心筋梗塞
  4. ホルモン(内分泌)の病気:甲状腺機能亢進症
  5. 老化
※2、3、4の場合は心臓やホルモンの病気に対しても同時に治療を進める必要があり、また、そうした病気の治療によって不整脈が消失する場合もあります。

不整脈の症状は

  1. 安静にしている時に自分で脈を測ってみて、1分間に50回以下または100回以上である。
  2. 規則正しくない(これには時々脈が休むあるいは飛ぶ場合、時々急に速くなる場合、全くばらばらな場合などがあります)
  3. 心臓がどきどきする。(動悸)
  4. 急に胸が苦しくなったり痛くなる。
  5. 頭がスーッと軽くなったりふらっとする、意識が無くなる
※このうち2,3,4は脈が速くなる不整脈(頻脈性不整脈)で起こることが多いですが、脈が遅くなる不整脈で見られる場合もあります。また5は脈が遅くなる不整脈(徐脈性不整脈)に多く見られますが、心室頻拍といった頻脈で起こる場合もあります。

病院での診断は

心電図:
不整脈が出ている時であれば心電図検査で判明します。
ホルター心電図:
不整脈がたまにしか出ない時には24時間携帯型の心電計をつけてもらい、後日コンピューターで調べます。これで、どの程度不整脈がでているか、危険な不整脈がでていないかが判明します。

胸部レントゲン写真:
スクリーニングとしてとります。心臓の形、大きさあるいは呼吸器の疾患をある程度判別します。
電気生理学的検査:
心電図は体表から電気信号をキャッチして記録したものですが、心臓の中で直接電気信号を記録して調べる方法を電気生理学的検査といいます。さらに、心臓のある場所で電気信号を発信してどのように伝わるかも記録します。発作性上室性頻脈や房室ブロックによる徐脈などの場合には静脈に針を刺してカテーテルを入れ、レントゲンで見ながら心臓内にカテーテルを進めて行う検査です。
心臓超音波検査:
不整脈の原因としての心臓弁膜症、心筋症等の検査を行ないます。心房細動のある場合は心臓内に血栓ができやすいのですが、その検査も可能です。
冠動脈CT、心臓カテーテル検査:
不整脈の原因として、狭心症、心筋梗塞が疑われている場合は行ないます。

治療は

基本的には、まず原因となる心臓病があればそれを治療することと、不整脈そのものに対する治療となります。原因である心臓病例えば心臓弁膜症、心筋梗塞等があればまず、その治療を行ない、同時に不整脈に対する治療を行なうことになります。
治療の方法としては、薬によるもの、ペースメーカーによるもの、カテーテルによるもの、さらには手術によるものがあります。期外収縮、脈の速い不整脈には薬による治療、脈の遅い不整脈にはペースメーカー、死にいたる不整脈には植え込み型除細動器(ICD)を植え込むのが一般的です。不整脈があるからといってすぐに治療する必要はありません。症状がひどい場合、無症状でも将来恐ろしい合併症を引き起こす危険性がある場合に治療を開始します。

薬による治療

期外収縮、頻脈性不整脈、心房細動に対して行ないます。徐脈に対する有効な薬はほとんどありません。
当院でよく使う不整脈の薬を簡単に説明します。
ジゴキシン:
心房細動にならないように予防します。心房細動の患者さんでも脈拍数を安定化させます。
リスモダン:
単発的な期外収縮の中でも心房性の期外収縮を抑えます。脈の速い不整脈を安定化させます。心房細動にならないように予防します。
ワソラン:
脈の速い不整脈を安定化させます。
βブロッカー(テノーミン):
脈の速い不整脈を安定化させます。
メキシチール:
単発的な期外収縮の中でも心室性の期外収縮を抑えます。

人工ペースメーカー治療

脈の遅い徐脈性不整脈の場合に行ないます。特に脈の間隔が5から6秒になる、脈がいつも一分間40以下の方、ふらつき、失神、胸苦しさなどの症状のある患者様に行ないます。
人工ペースメーカーは電気信号を発信させる小さな機械を胸の皮下に埋め込み、機械から電気信号を伝えるワイヤー(リード)を静脈に入れて心室或いは心房に接触させます。このようにして機械で電気信号を心臓に送って心臓を規則正しく打たせる訳で、手術は約1時間で済み日帰りも可能です。
ペースメーカー
ペースメーカー

植え込み型除細動器(ICD)移植術

新しい治療法で最近保険適応された治療法です。ペースメーカーと同じように、小さな機械を胸の皮下に植え込み、機械から電気信号を伝えるワイヤー(リード)を静脈に入れて心房と心室に接触させます。これで心室細動、心室頻拍の不整脈の発生を感知し自動的に除細動(電気ショック)を行う装置です。手術は2時間で、全身麻酔で行う場合もあります。この治療により、命に関わる不整脈で薬でも改善しない患者さんに対し、突然死を予防できます。

カテーテル治療

脈の速い不整脈の中でも発作性上室性頻脈などでしばしば行ないます。心房から心室へ電気信号を伝える刺激伝導系に異常な回路があり、それをカテーテルの先端で電気で焼くことによって異常な道を通れなくする治療法です。ほとんどの場合、もう薬を飲む必要もなくなります。

手術治療

心臓手術(弁膜症、狭心症手術)のときに同時に心房細動を消失させる目的で行ないます。心房細動のみの手術を行なうことは日本ではまずありません。しかし、心房細動が原因で何度も脳梗塞、全身の塞栓をおこす患者様には手術の適応があると思います。心房細動のきっかけになる場所から心房全体に伝播しないように左房を隔離します。隔離は直接切るか、冷凍凝固するか、電気凝固するかがあります。人工心肺装置を使用し心臓を止めて行います。成功率は80〜90%です。当院では人工心肺装置を使用せず、心臓を動かしたまま電気凝固を行う方法も行っております。

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